10年以上前にこの形を完成させ、今もデザインを変えず生産が続いている”キャロルクリスチャンポエル”の最高傑作「スカーステッチドレザージャケット」。
世界中のファッショニスタ、アーティスト、ハリウッドスターなども愛用するこの1着は、”CCP”の先鋭した世界観、芸術性が強く反映されながら、現実的なスタイリングの幅広さも有しています。
将来的にライフスタイルが変わろうと、いつまでもマイクローゼットに掛けておきたい宝物。そんな洋服をお探しの方にキャロル氏が生み出した名品をこの記事でじっくりご紹介できればと思います。是非ご覧くださいませ。
SCARSTITCHED LEATHER JACKET / CAROL CHRISTIAN POELL
“LM/2498 CORS-PTC”
Color:BLACK (10)
首元にしっかりと襟のついたこちらの品番”LM/2498″。日本国内では「襟付き」という愛称も耳にすることがございます。
もう一つの定番傑作レザージャケット”HIGHNECK LEATHER JACKET”と並ぶ”CCP”の2枚看板。
何か受賞歴などがある訳ではございませんが、愛用者の方々からの「世界一」と称する声も少なくありません。
ジップの開閉は身頃中央に位置付けたシングルタイプ。
アームホ-ルは袖筒を前面に出し、人体構造に合わせてパターニングされています。
肩から袖先にかけてカーブする人影のような輪郭線。エルボーにはスムーズな腕の曲げ伸ばしが出来るよう、立体的な切り替えをデザイン。
袖付けはフロントがセットインなのに対し、背はバックラグランという複合的なスタイル。
最もテンションの掛かる肩から背中、肩甲骨周りの可動域をなるべく広げ、レザーの伸びや馴染みが着用者の身体に沿って現れる合理的な設計となっています。
「革に新たな命を吹き込む」というポリシーのもと生み出される”CCP”のレザー製品は、人の体が中に入り躍動するその瞬間が到達点なのです。
前開きにはプラスデザインで4つのフックが取り付けられています。
非常に小さいながらも目に付くアクセントは、馴染む前の革を育てる段階でも非常に有効。時にはジップを閉めずにフックだけで着用頂くことも可能です。
ファスナーは上下それぞれにスライダーのついたダブルジップ。シルエットの調整、スタイリングのアレンジも様々。
袖先のデザインにも、フロント同様のフックを採用。
このアイテムはウエアとしての縫製等を全て済ませた後から染色を行う「製品染め」というプロセスを取っているため、金具にはくすみや錆が現れます。
この「製品染め」によって最も影響を受けるのはもちろんレザー。革を染料に漬け込み不均一な伸縮・硬化を起こすことで佇まいに奥行きが生まれます。
染色後の乾燥のプロセスはシルエットの再形成、袖のシワ入れなども同時に行われるため、パターニングだけでは表現しきれない感覚的な仕上げを実現。
この意図的な経過により、革の持つ奥深い表情に金属が自然に溶け込み唯一無二の革製品が完成を迎えるのです。
両サイドのポケットは内側にマチを設けたL字型。ジップが前傾するかのように取り付けられ、手を入れ易いのみならず、脇から裾にかけてのラインを立体的に見せています。
内側は両胸にジップポケットが付いており、ライナーはパンチングが施されたコットン素材。
アームにもこの裏地が使われており、袖通しは滑らか且つハリがあって丈夫な印象です。
モデル 175cm 60kg
着用サイズ44
ここからは実際の着用画像もご覧いただければと思います。
こちらのスタイルは”CCP”の定番ニットセーターとコーディネート。
アーム周り、身幅にやや余裕を設けたシルエットになるため、秋冬は厚手のインナーを着込みやすいのもこのモデルの長所です。
今回この記事でご覧頂いているモデルは、ブランド内で最も定番的なホースレザー、素材品番”CORS”を使用しています。
野性的な力強さときめ細かで美しい表情を併せ持つこちらの馬革は、程よい厚みと弾力があり油分も多く含んで丈夫。クリームなどのケアを日常的に行う必要もございません。
大変扱いやすく、いつまでも美しいとても優秀なマテリアルです。
実際に袖を通すと、腕とレザーの間に生まれたスペースにも気分高まるシワが生まれます。
バックスタイルは両端に反り上りをつけ、パンツとトップス、インナーとの調和が意識されています。
重厚な革だからこそなるべく角は作らずスムーズに。
細部まで観察するとこうしたトリック、デザインの引き算が肝となっているのです。
細かい部分にまで感覚を及ばせて生み出される”キャロルクリスチャンポエル”の作品の数々。
中でも革製品は染色工程で数か月の日数を費やすため、1年で生産される数もごく僅かに限られます。
スマホで検索すれば画像はいくらでも手に入りますが、この一着を手に取り、空間を供にする瞬間は大変貴重で特別。
私がいくらここで熱く語ろうと、実際にこのレザーに袖を通す体験には全くもって歯が立ちません。
着ると感動できる服。「見に纏う芸術作品」と言えば少し大げさですが、それほどに感性揺さぶる本物の逸品です。
SHELTERⅡ 山崎