“coin” work blazer / taichimurakami

先日入荷した”タイチムラカミ”の新コレクション。

デザイナー村上氏の取り組みは年々哲学的になり、相変わらず我が道を突き進んでいる最中です。

新ジャンルの確立や新たな提案にも力が入りますが、それと同じく注目したいのが今まで大切にしてきたオリジナル技術のアップグレード。

本日ご紹介する商品もブランドが以前発表したスタイルを改良した素晴らしい作品です。

“coin” work blazer / taichimurakami

ひょうり‐いったい 【表裏一体】をコンセプトとしたブランドオリジナルの製作プロセス”COIN”(コイン)。

上の写真のジャケットは左右どちらも同じもの。それぞれ面を返して並べて撮影しております。

カタチ、輪郭は同じ。しかしながら表裏でデザインの異なる硬貨(コイン)とイメージをリンクさせたリバーシブルで着られるアイテムです。

片側の面はシックなオリーブブラウン。シームテープが張り巡らされた少々エッジの効いたデザインが目に付きます。

このアクションには特別な接着剤が使用され、縫い目を湿気や水から守りながら強度を向上させています。

パターニングをなぞるようにテープが貼られ、この1着が洋服としていかに特異かを表現。服作りのセオリーからは大きく外れた設計を目で追わせる重要なアプローチです。

バックスタイルのシームもとても印象的。アースカラーに似つかないやや工業的な光沢が良い刺激になっています。

私自身もこの複雑構造を文字にするのに苦戦しておりますが、じつはすべてのシームは脇下を通っておらず、どれもお互い交わらないルートでそれぞれの役目を果たしています。

着用時のストレスの発生源となり得るアームホールという概念を無くし、身体の動きを極力遮らないよう熟考の末に誕生したアイデア。

ブランドの代表的な技法のひとつ”(UN)INTERCEPTION”に基づいた完全オリジナルの製作プロセスです。

こちらの面は両サイドにアウトポケット。フロントは細い棒状のデザインボタンを使用します。

そしてここからはアナザーサイドをご覧いただきます。

こちらは表面的には落ち着いたシンプルスタイル。

今回使用している生地は経糸と緯糸の合わせ方によって生地組織や色目の二面性を表現。表地と裏地を2枚用意しそれぞれを縫い合わせる従来のリバーシブル製法と違い、両面の色味がそれぞれに混ざり合います。

ブランドのカラー表記はブラックとなりますが、やや茶色味の入った浅い黒と言った印象です。

シームテープの目立った面とは打って変わって、非常にクールで落ち着きを感じます。

表裏でガラッと変わる空気感。着る面によって気分を大きくスイッチ出来そうです。

ボタン、ポケットのディティールもそれぞれ、両面で異なります。

こちらのフロントはお馴染みの端が掛けたデザインボタン。サイドポケットには開口の調節機能となるジップが付いています。

タイチムラカミの製品で用いるパーツはどれもブランドオリジナル。金具は贅沢にシルバー925製です。

最後に注目いただくのがファブリック。

今回使用している生地の組成は27%の紙が含まれています。

これは”DNA GENOME PAPER”という村上氏が2020AWシーズンより取り組んでいるとてもユーモラスなプロジェクトから成るもの。

「この製品は素材製作から企画、縫製までの全工程を日本国内で村上太一が行っています。」

上記文言が繰り返し印刷された特別な紙を平紐上にカットし撚り合わせた糸を開発。

この「紙の糸」は日本が誇るいくつもの最先端製紙技術が駆使された衣服にも使えるもので、村上氏が手掛ける多くの素材に混ぜ込まれています。

紙を衣服に用いるという考え方は奈良時代には既に日本で生まれており、その歴史は麻や綿よりも古いという一説も。

「この作品を誰がどこで作ったのか」

この証明を日本古来の技術からヒントを得て、まるでDNAかのように衣服に遺します。

今回ご紹介しているジャケットの素材は、ヘンプ、コットンに紙の糸を混紡し、非常にドライで風通し良く仕上げられています。

着用時、肩に乗る感覚がほとんどなく、手に取っていただくと驚く軽さです。

表面のざらっとした触感は肌への密着を抑え、少し汗ばむ梅雨時期などの不快さもきっと和らげてくれる事でしょう。

“coin” work blazer / taichimurakami

今この記事を書いている4月下旬でもまだ少し早く感じるような軽涼感。5月以降の大活躍が目に見えています。

今から使える羽織お探しの方には素直にお勧めできる1着。是非ご検討くださいませ。

皆様のご来店、心よりお待ちしております。

SHELTERⅡ 山崎

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