cornelian taurus by daisuke Iwanaga 特別企画 “process” vol.4

[連載] “cornelian taurus by daisuke Iwanaga “特別企画”process”

毎日頭を悩ませながら書き進めてきたこの連載も、いよいよゴールが見えて参りました。

このvol.4でいよいよバッグが完成いたします。どうぞお楽しみくださいませ。

※過去3つの記事をまだご覧頂けていない場合は、下記リンクより順を追ってご覧ください。

“process” vol.1

“process” vol.2

“process” vol.3

前回の取材から日を改めて、この日最初の作業はベルトの穴開け。

まず型紙で穴の位置に印付けを行います。

台の上にベルトを置き、棒型の工具の上からハンマーで強く叩くと綺麗に穴が開きます。

実はこの作業、私も数か所トライさせていただきました。

岩永さんのお手本を見させていただき、しっかり力を入れて叩いたつもりでしたが、最初は綺麗に穴が開けられず革の丈夫さを実感。

手作業の緊張感を肌で感じつつ、なんとかベルトにすべての穴を開けることができました。

バッグのメインの部分は前回の取材からこの日までの間に、少し作業を進めていただいておりました。

バラバラだった4枚のパーツが写真のように綺麗に繋がり1枚に。

そしてこちらは裏側。白の芯地が付き、いかにも製作途中といった状態に見えるかと思います。

この芯地は最終的に別の生地で覆われるため、完成するとすべて見えなくなりますが、革のハリを整えたり、製品強度を高める上で無くてはならない存在。重要な役割を果たしています。

やや白が濃くなっている箇所には、芯地を貼る前に革に直接補強テープが貼られています。

柔らかくなりがちな革端のあたりに僅かな補強を加えることで、全体のハリや厚みを均等にするのがこの処理の狙い。

革の状態やバッグのデザインに応じて岩永さんが貼り具合を調節されているそうで、1点1点テープの幅や貼り方が異なります。

上の写真のものはバッグの裏地。こちらも事前に作っておいていただきました。

ベルトの先を入れ込むホールの部分もすでに備え付けられており、筒状になった状態で革と一緒に縫い合わせていきます。

ここからはいよいよ最後の縫製作業です。

ベルトの連結パーツから順にメインの革と縫い合わせていきます。

先ほど穴を開けた2本のベルトもこの時点で取り付けられます。今回制作いただいているモデルは2つの持ち手が付くトート型。左右均等にボディーと縫い合わせていきます。

パーツの取り付けを終えた後は、革の端と端を縫い合わせいよいよ筒状のバッグの形にしていきます。

コーネリアンのバッグは基本内縫いで制作されているため、完成形は表にステッチが出ることはほとんどありません。

写真のように裏向けの状態で縫製作業が進められ、最後に表に返して完成という流れが主になります。

上の写真は内側に裏地を入れ込み、バッグの開口部で縫い合わせているシーン。

バッグを筒状にしてからの作業は、針を落とすポジションが取りずらく、一筋縄では行かない様子です。

デザインを少し変えて作業工程を見直せば、こうした難しい縫製は避けられるそうですが、このリスクをあえて取ることで、他ブランドのバッグではあまり見られない仕上がり、独自性が生まれます。

難しい箇所が綺麗に縫えた時や、いつも苦戦する作業をスムーズにクリア出来た時は、バッグを作り始めて20年近く経った今でも嬉しいと語る岩永さん。

ここまで拘りを持って活動ができるのも、結局は「ものづくりが好き」であることが最大の原動力なのかもしれません。

縫製作業が完了し形を整えると、見覚えのある内ポケットとレザータグが姿を現しました。そしてこのままバッグを裏返し。

ついに表革が姿を現しました。内に付けた裏地の底を縫い合わせこの段階でバッグとしてはほぼ完成です。

残す最後の仕上げはベルト穴のコバ塗り。専用の塗料で穴の内側を一つ一つ着色していきます。

岩永さんの粋な計らいで、最後の作業は私がすべて行うことに。

まだかまだかと待ち望んでいた自分のバッグですが、この仕上げを終えればこの取材も終了かと思うと少し寂しさすら感じました。

岩永さんを始め、この企画にご協力いただいたブランドメンバーの皆様には本当に感謝しかありません。

ついにバッグが完成いたしました。

今回製作頂いたのは2019年秋冬コレクションで発表された”hand piece flat”というモデル。

どのモデルでオーダーするかは相当悩みましたが、自分らしくクロコダイルを使いこなせればと思い、カジュアルなデザインのこちらを作っていただくことに決めました。

シンプルだからこそ引き立つフロントの1枚使い。ここから使い込んでいく事で、腑模様がさらに立体的になっていくと思うとこの先の変化も楽しみでなりません。

革は自然から頂く大切な天然素材。

私たち人間がレザーを活用し「ファッション」として楽しめることの贅沢さを感じながら、このバッグをできる限り長く愛用していけたらと思っています。

一つ一つのディティールにも本当に思い入れがあります。

私自身このブランドのアイテムをいくつも愛用し、魅力は取材以前より理解していたつもりでしたが、今回製作の舞台裏を見せて頂き、思いもよらない小さな部分に興味深い哲学があることを知りました。

本来一つのバッグを作品として見る場合、作り手の細かな拘りはあまり表に出るべきものではないのかもしれません。

しかしながら、こうした影の努力が間違いなく商品の魅力を強く引き上げており、使う人にも是非知っていただきたい価値のあるストーリーであると、この取材を振り返りながら私は強く思います。

以上を持ちまして、今回の特別企画”process”は完結。

ここまで記事を読み進めていただきました皆様に改めてお礼を申し上げます。

私にとって今回の取り組みは今までの人生で経験した事のない一つのチャレンジでした。正直この素晴らしいブランドの魅力を100%伝えるにはまだまだ力不足だったように感じます。

しかし取材を進めると、仕事に対しての向き合い方や、より高みを目指す岩永さんの姿勢を肌で感じ取り、当初想像していた企画内容を遥かに超える濃い情報をお届けできたようにも思います。

この連載を通じて”cornelian taurus by daisuke iwanaga”の魅力をより深く感じて頂くとともに、皆様のお仕事や今チャレンジしている事、日々の生活のヒントとなる何かを感じ取っていただければ幸いです。

SHELTER2 山崎

Mail                TEL

https://shelter2.com/